Tokyo diary

本と映画の記録です

【映画】過去と向き合い善行を積みなさい/シアター•プノンペン

f:id:koheishiozaki39:20180104205943j:image

 

カンボジア旅行に行く直前に、歴史を学ぼうと手にとった「シアター•プノンペン」。カンボジア映画です。同国初の女性映画監督による作品とのこと。

 

過去としっかり向き合い、善行を積むことを心がけなさい

 f:id:koheishiozaki39:20180104211501j:image

 

「それが哀しみを癒す唯一の方法です」と続くこの言葉、映画の途中、仏僧が語る言葉です。

 

カンボジアでは、1970年代、クメール•ルージュと呼ばれた武装組織が政権を握り、同国は混乱の極みとなりました。医師や弁護士、教師など学を持つものは次々と処刑され、映画監督や俳優もその対象でした。結果、当時あったカンボジア映画300点のうち、現存するのはわずかに30。この間、人口の4分の1が死亡したと言われています。

 

本作品は、こうした暗い歴史を若い世代に語り継ぐことが必要ではないかとの問題意識のもとに作成された映画だそうです。

 

本編は、1974年、まさにクメール•ルージュ施政下で、完成することなく眠っていた未完の映画を、2014年の世の中に復興させるべく、大学生の女性ヒロイン(ソテア)が奮闘する物語となっており、クメール•ルージュの時代を伝える映画というよりは、そのことをどう受け止め、いまを生きていくのかを問いかける映画になっているように感じました。

 

国民的な哀しみを乗り越える過程にあるもの

 

f:id:koheishiozaki39:20180104211457j:image

 

僕のような、同時代にも生きていなければ、同国にも直接的には関わりがない日本人が語るのは憚かるべきかもしれませんが、この映画を通じて、カンボジアの一定程度の世代の方々は、'あの時代'を経験したという、国民的な哀しみを共有しているのかなと感じました。映画に登場する、'あの時代'の経験者はどなたもそれぞれに、傷を負いながら2014年の現代を生きていました。過去を捨てる者、待ち続ける者、過去に生きたままの者、その形は違えど、誰もがあの時代の被害者。そして、そのことを乗り越えてゆく過程が、映画という物語を、しかも未完の物語を、次の世代(ヒロイン•ソテア)がつないでいくということだったのだろうと思います。

 

カンボジアの若い方々が、この映画をどのように受け止めたのかがとても気になりました。そして、僕たちもまた、同じように語り継がれるべき歴史を持つとともに、少しずつ、年を重ねるにつれ、語りつぐべき立場にもなりつつあるのだろうなと感じた28歳でした。

 

さて、カンボジア行ってきます!

 

シアター・プノンペン - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画