Tokyo diary

本と映画の記録です

【本】物語のおわり

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湊かなえブラックは影を潜めた

この作家といえば『告白』のイメージが強いんですよね。筋はよく覚えていないけど、学校を舞台にしたとにかく不気味な小説だったことを覚えています。その不気味さによって作家としての彼女の立ち位置が際立っているという印象を持っていました。

今回、相当久しぶりに湊かなえさんの本を手にとったのはそうしたイメージと、『物語のおわり』というなにか想像を掻き立てるタイトルが重なってのことでした。しかし残念なことに、本書ではそうした湊かなえさんの勝手な特色だと思い込んでいた不気味さは影を潜めた印象を持ちました。長らく見ない間にスタイルが変わったのか、あるいは、本作が湊かなえさんにしては挑戦的なスタイルをとったのかはわかりませんが。『告白』だけのイメージでこの作家を語っているので、素人評であることは承知の上で語りますが、彼女の小説は、そこに漂う不穏さによって読者が先を読み進める動機を与えてきていたと思っていたものだから、それのなくなった本書では、かなり辛口であることを覚悟して書くと、誰にでも書ける既視感のある展開になってしまった気がしたのですよ

 

結末のない小説から始まる第1章はドキドキした

とはいえ、冒頭の章にはその独特の雰囲気は確かにありました。

-田舎町の夢追う少女が大人になり、街で出会った憧れの高校教師と婚約が決まる。だけど彼女には夢がある。小説家になるために、東京の有名作家の弟子として住み込みで修行をしたい。彼は反対。両親も反対。思いつめた彼女は、誰にも言わずバスに乗って街を出る。しかしバスを降りると婚約者が待っていた。

ここで第1章、おわり。おっ、と思わせる展開だったのですよ。ここに出てくる婚約者のハムさん、優しい男なのだけど、何考えてるのかわからない不気味さもあって、なにかが起こる予感を思わせた入りではあったのです。

しかしここから続く章がどうも僕の琴線には響かなかった。第2章以降は、夢を追う人、夢をあきらめつつある人、夢の邪魔をしてしまっているかもしれない人、そのようにして北海道にやってきたさまざまな立場の人の物語がオムニバス的に続きます。そして第1章の物語が文字になった原稿に出会う。最後、ハムさんがバスから降りてきた第1章の主人公の少女を出迎えるシーンをどのように解釈するか?についてを、自分の立場に置き換えながら、解釈していく章立てが続くのですが、第3章くらいでこのパターンに飽きてしまいました(泣)

そしてラストでこの本の伏線はいったん回収されますが、うーんなんとも既視感のある展開で、期待したものは得られなかった感じでした。

 

小説次どうしようかなと迷います。村上春樹の系譜に戻って、『グレートギャツビー』とか『キャッチャーインザライ』とかこの辺りにいこうかなあ。

 

物語のおわり (朝日文庫)

物語のおわり (朝日文庫)