Tokyo diary

本と映画の記録です

【本】消えゆく限界大学―私立大学定員割れの構造―

2019年1冊目。

 

消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造

消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造

 

 

ニッポンの大学は多すぎるのか?どんな大学が生き残れるのか?大学の消長に私たちは何を見るのか?本書はなくなる大学・残る大学の分析を通じて、人びとの手に届くようになった「大学」とは何だったのかを問う(オックスフォード大学教授・苅谷剛彦)。

 

弱小私大が淘汰されるメカニズムを、統計データを駆使しながら明快に示した画期的書(白水社

 

との書評がブックカバーに あるが、この書評の通り、ゴシップ調になりがちな大学論を、事実をもとに冷静に分析した良書でした。

 

  • 90年代前半期の18歳人口のピーク×高卒就職環境の悪化に伴い、大学進学者が急増。この間、旧短大からの大学転換が相次ぎ、大学数が急増した(※1986年~2015年の 20年間で新設された大学270校のうち190校(7割強)は旧短大を母体とする)
  • しかし実態は、短大から大学への看板の付け替えに過ぎず、学部学科プロダクト、施設・設備、教育・研究内容などは温存された場合が多かった。総じて「短大以上・大学未満」と呼ばざるを得ないのが実態であった
  • 結果、現状、日本の私立大学の半数近くが定員割れの状況にあるが、その7割以上は旧短大を母体とする大学となっている
  • 一方、この間、トップのリーダーシップのもとで目覚ましい発展を遂げた中小大学も存在する。本書では武蔵野大学松本大学昭和女子大学などが取り上げられている
  • 武蔵野大学では、旧態依然の教授会の現状維持論を、理事会主導で乗り越え、入学定員2000名を超える総合大学へと成長した
  • 松本大学では、入学前教育の段階で「上級生・同級生とのつながり」を創る仕掛けや、「専門カウンセラーの個別面談」を取り入れた
  • 昭和女子大学では、2000年に就任した坂東眞理子氏のもと、創立者一族による理事会運営から脱却し、学外理事に実業界の要職者を招へい。改革を早めた

 

ざっとまとめるとこんなところでしょうか。

1学年1,000人以上の定員を持つ一定規模以上の大学が、募集環境上有利なことは間違いないが、小規模であってもトップのリーダーシップのもと、市場を向いた、中長期目線の改革を推進することによって、生き残ることができるものだと感じました。