Tokyo diary

本と映画の記録です

【本】人口減少の未来学

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内田樹氏を編者とした12人の論考集

 

この週末は、日本の未来を考えるをテーマに落合陽一氏の『日本再興戦略』と本著を読んだが、12人が力を合わせても落合氏に叶わない印象だった。本著の編者とタイトルは以下の通り。

 

  • 序論 文明史的スケールの問題を前にした未来予測 内田樹(思想家)
  • ホモ•サピエンス史から考える人口動態と種の生存戦略 池田清彦(生物学者)
  • 頭脳資本主義の到来-AI時代における少子化よりも深刻な問題- 井上智洋(経済学者)
  • 日本の"人口減少"の実相と、その先の希望-シンプルな統計数字により、「空気」の支配を脱する 藻谷浩介(地域エコノミスト
  • 人口減少がもたらすモラル大転換の時代 平川克美(実業家•文筆家)
  • 縮小社会は楽しくなんかない ブレイディみかこ(保育士•コラムニスト)
  • 武士よさらば-あっかくてぐちゃぐちゃに、街をイジル 隈 研吾(建築家)
  • 若い女性に好まれない自治体は滅びる-「文化による社会包摂」のすすめ 平田オリザ(劇作家•演出家)
  • 都市と地方をかきまぜ、「関係人口」を創出す 高橋博之(『東北食べる通信』編集長)
  • 少子化をめぐる世論の背景にある「経営者目線」 小田嶋隆(コラムニスト)
  • 「斜陽の日本」の賢い安全保障のビジョン 姜尚中政治学者)

 

まずテーマずれてませんか?

と、思ってしまう論考が半分くらい。「人口減少社会の未来について、いろいろな視点からの知見をまとめた本を編みたい」という文藝春秋の提案からはじまった本だと冒頭に記されているが、果たしてその目的は果たされているのだろうか?と、思わざるを得なかったというのが、正直な感想。みな、人口減少社会の未来への提言というより、ご自身の専門領域でイイタイコトを、"人口減少"というテーマと関連づけて述べた、という感じの印象の本だった。これだけたくさんの論者が集う訳だから、もう少し、課題設定をシャープに絞り込んでまとめた方が一つの本としてはまとまりが出たと思う。もちろん、ところどころに、「おっ」と思う記述や、「なるほど」と思う記述もある。たとえば、25〜39歳の人口数と0歳〜4歳までの人口数の比率を都道府県別に比較した、藻谷氏の「次世代再生力」という概念や、ゲゼルシャフト(利益共同体)やゲマインシャフト(地縁血縁型共同体)には含められない、それらの共同体の間の概念としての、平田氏の提示する「関心共同体」という概念など、今後の未来社会を占う上でのキーとなりそうな考え方を吸収するという意味ではよかった。が、先に触れたように、当初のテーマ設定から離れた論考が目立った印象は拭えなかった。

 

と、いうことで☆は3つもいかないかな(満点÷つ)。