Tokyo diary

本と映画の記録です

【映画】善き人のためのソナタ

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自由を求める作家と、彼を監視する役人とを結びつけるもの

 2006年のドイツの映画です。舞台はベルリンの壁崩壊前夜の1984年、東ドイツ。国家に目をつけられたのは自由を求める東ドイツの作家ドライマン。シュタージと呼ばれた秘密警察の役人ヴィースラーは、徹底した監視体制を敷き、24時間ドライマンを監視下におきます。ヴィースラーは大学での講義で、48時間眠らせずに同じ質問をし続けることにより、嘘を見破ることができると語るなど、完全に東ドイツ国家に忠誠を誓う人間でした。一方のドライマン。本心では自由を求めはするものの、東ドイツで作家として生きるには、表立った反旗を国家に翻すことはできないことも分かっていました。ヴィースラーはドライマンの監視を始めるものの、表だった反政府活動は見えてきません。そんな中、反政府的な活動を咎められ、東ドイツでの立場を奪われていた作家イェルスカが自殺します。知らせを聞いたドライマンは哀しみ、生前イェルスカから譲り受けた楽曲『善き人のためのソナタ』を自宅のピアノで奏でます。これがヴィースラーの心を動かします。

 

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地下でひとり『善き人のためのソナタ』を聴くヴィースラー

静かなピアノの音。それよりも静かな地下壕。そこでひとりドライマンの監視を続けるヴィースラー。そこに流れてきたのは、ドライマンがイェルスカの死を悼んで贈ったレクイエム、『善き人のためのソナタ』。思わず涙するヴィースラー。監視するものとされるものとの立場を越え、音楽が人の心を通わせた瞬間を捉えたシーンです。この時まだ、ドライマンは自分が監視されていることは知る由もありません。もちろんヴィースラーの存在も。そんな二人を結びつけた音楽というものの尊さが光りました。

 

映画の中の映画と呼ぶにふさわしい

こういう映画があるから、僕はきっとこれからも映画を見続けるんだろうと思えた映画でした。ベルリンの壁が崩壊し、自由な国家となったドイツで出会う、ヴィースラーとドライマン。そこで終わるラスト。その出会い方に余韻があり、静かな映画の締めにふさわしいものとなっています。

本作品は、僕の中での2018年現時点で堂々トップに躍り出ました。

 

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